水産学会水産環境保全委員会主催のシンポジウムが、3月26日(火)に水産学会春季大会会場内にて開催されます。
1.テーマ:東日本大震災復興事業による沿岸域の改変が沿岸生態系に何をもたらすか?
2.開催日時:2019年3月26日9:30〜17:20
3.場 所:東京海洋大学品川キャンパス第5会場
4.主 催:水産環境保全委員会
5.共 催:東日本大震災災害復興支援検討委員会
6.企画責任者:後藤友明(岩手大農)・伊藤絹子(東北大院農)・清野聡子(九大院工)・大越和加(東北大院農)
7.プログラム
9:30–9:35 開会挨拶 水産環境保全委員会委員長
9:35–9:45 趣旨説明 後藤友明(岩手大農)
9:45–12:15 セッションⅠ 震災復興に伴う沿岸生態系の変化
座長 1〜3:大越和加(東北大院農),4〜5:伊藤絹子(東北大院農)
9:45–10:15 Ⅰ-1. 東北地方太平洋沖地震津波と復興事業に伴う生態系への影響
松政正俊(岩手医大)
10:15–10:45 Ⅰ-2. 干潟 — 蒲生干潟に対する影響
熊谷佳二(蒲生を守る会)
10:45–11:15 Ⅰ-3. 河口汽水域 — 生物生産システムへの影響
伊藤絹子(東北大院農)
11:15–11:45 Ⅰ-4. 砂泥底域 — マクロベントス群集から見えてくる海底環境への影響
大越和加(東北大院農)
11:45–12:15 Ⅰ-5. ラグーン(入江) — 万石浦の魚類相への影響
大見川 遥(宮城水産高校)
12:15–13:15 昼休み
13:15–16:30 セッションⅡ 沿岸域における現状と課題
座長 1〜3:後藤友明(岩手大農),4〜6:清野聡子(九大院工)
13:15–13:45 Ⅱ-1. 海岸法改正20年-環境保全と参加促進の進歩、停滞、展望
清野聡子(九大院工)
13:45–14:15 Ⅱ-2. 新たな海岸管理政策に向けて
藤田士郎(国土交通省海岸室)
14:15–14:45 Ⅱ-3. 地域の自然資本を活かした防災と復興
小沢晴司(環境省東北地方事務所)
14:45-15:00 休憩
15:00–15:30 Ⅱ-4. 岩手県における海岸対策事業と環境配慮の取り組み
後藤友明(岩手大農)・江口佑輔(岩手県県土整備部)
15:30–16:00 Ⅱ-5. 越喜来湾における生態系調査の防潮堤建設に対する効果
朝日田卓(北里大海洋)
16:00–16:30 Ⅱ-6. 防潮堤建設に対する沿岸地域住民の考え方
今村航平(東大アジア生物資源環境セ)
16:30–17:15 総合討論
17:15–17:20 閉会挨拶 水産環境保全委員会委員長
17:20 閉会
6.開催趣旨
2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震による大津波は,東北地方太平洋岸の広い範囲に甚大な被害をもたらした。国は,復興事業として,頻度の高い津波に対抗しうる堤防建設促進による海岸対策や,かさ上げによる浸水地域の再生を急ピッチで進めてきた。これらの取り組みは,沿岸の浸水地域におけるまちづくりや産業活動に極力支障が生じないよう進められてきたが,沿岸域の生態系に対する考慮がほとんどなされないまま進められてきた。こうした取り組みに対し,当委員会を含むいくつかの学会は,東日本大震災からの復興事業の沿岸環境への配慮を求める要望を出してきたが,2018年3月時点で予定されている事業の96%が着工し,48%が完了している。このような復興事業は津波による沿岸生態系に対する撹乱・回復過程と同時に進行しているため,双方が複雑に関連していると考えられる。震災から8年が経過し,東北マリンサイエンス拠点形成事業を中心に沿岸生態系に対する津波による撹乱からの回復に関する多くの研究成果が得られている一方で,復興事業に起因する周辺生態系への影響は十分に整理されないままとなっている。沿岸域の生態系に依存して成り立つ沿岸漁業にとって,沿岸域の持続的な利用のためには,津波対策として行われてきた復興事業による沿岸域の生態系に対する影響を正しく評価することが必須である。そこで,復興事業が沿岸域の生態系に及ぼす影響について現状を整理し,海岸における復興事業と生態系保全の共存による持続的な沿岸利用に向けて何が必要か議論を進めたい。