岩手県大槌町の「町の鳥」はカモメです。町内のマンホールには、「町の花」であるつつじと共に、カモメがデザインされています(写真1)。一口にカモメと言っても、大槌町では8種類のカモメ科鳥類を観察することができます。中でも多く観察できるのは、冬鳥として大槌に渡ってくるカモメ(学名:Larus canus)と一年を通して大槌に生息しているウミネコ(学名:L. crassirostris)の2種です。
町の鳥として慕われるべきであるカモメ達ですが、巷ではふ化場から放流されたサケ稚魚を食べる悪い存在として認識されてしまっているようです(写真2. 詳細はメーユ通信第9号を参照)。確かにカモメ達は、大槌川に放流されたサケ稚魚を食べていました。しかし、これまでの調査結果から、放流数に対する割合で見るとあまり多くのサケ稚魚を食べていないことが明らかになりました。カモメ達にとってサケ稚魚は、小腹を満たす程度の間食であったようです。
調査を通して、大槌町のカモメ達の面白い生態も明らかになってきました。例えば、動物搭載型の小型GPSを使った調査では、大槌町で繁殖するウミネコの中には、遠く100kmも離れた宮城県南三陸町まで餌を取りに移動する個体がいることが分かりました(図1)。他にも、春にはコウイカの類を沢山食べていること、初夏になると海ではなく陸域に出向いて昆虫を食べていることなどが明らかになってきています。今後、大槌町の鳥「カモメ」の面白い研究成果をみなさんにお伝えできればと思います。(N.S.)
写真 1(左上): 大槌町内で見られるマンホール 写真 2(右上): 放流されたサケ稚魚に群がるカモメ 図 1(左下): ウミネコ6羽の3ヶ月分の移動軌跡
http://www.icrc.aori.u-tokyo.ac.jp/teams/whats-happening/newsletter/featur/teams/index.htmlQactionEcommon_download_mainAupload_idE3889 (メーユ通信 第9回特集P7:伊藤元裕「海鳥の目からサケの謎に迫る」) |